Pick Up — Research Project

BEYOND
X-MINUTE CITY 歩いていける都市から、歩いていく都市へ

暮らしに必要な施設へ、徒歩や自転車で数分。世界の都市が掲げる x-minute city。 でも——「行ける」ことと「行く」ことは同じではなく、このギャップは従来の x-minute city の枠組みでは捉えられません。 実際の人の動きから「行く」までを測る新しい概念として提案しているのが、Beyond x-minute city です。

01 — The Gap

「行ける」のに、「行かない」。

国際誌 Transportation Research Part A に掲載した研究では、買い物・医療・金融のすべてに 徒歩15分以内で行ける居住者に注目しました。ところが、そのうち 7割超が、なお車を使っていた。近接だけでは、歩行は生まれません。

さらに分析を進めると、施設までの徒歩到達時間が11分以上になると自動車が選ばれやすくなること、 人口密度が効くこと、一方で環境や健康への意識は効かないことが分かりました。

02 — Reach vs Act

100人が「歩いて行ける」。
では、何人が歩いている?

歩いて行ける(Reach-15)0
実際に歩く(Act-15)0
行けるのに、車0

横須賀市(居住誘導区域)の 15-minute BG より。100人のうち97人が施設に歩いて行けるのに、実際に歩いて動いているのは39人。出典:室岡・堀川・谷口(2025, 土木学会論文集D3)。

0%
歩いて行ける(Reach-15)── 横須賀市の居住誘導区域で施設に徒歩15分以内で到達できる人の割合
0%
実際に歩く(Act-15)── 実際に徒歩・自転車で移動しているトリップの割合
0min
徒歩11分以上になると、自動車が選ばれやすくなる
横須賀市 Act-15 100% Reach-15 100% 100% 1-(Act-15) (1-Reach-15) 39% 97% 3% 61%
TOOL 01

x-minute BGBox Graph

市全体で「歩いて行けるか(Reach)× 実際に歩いているか(Act)」を一枚で捉える図。 横須賀市の居住誘導区域では、歩いて行ける人が約97%いても、箱の大半は“行けるのに車”の右下に入ります。 都市の健康診断票のように、自治体どうしの比較や経年チェックに使えます。

出典:室岡・堀川・谷口(2025, 土木学会論文集D3)図-5の掲載値をもとに筆者作成。
TOOL 02

x-minute HMHeat Map

実際に徒歩・自転車の移動が起きている場所を地図に描く図。 横須賀中央・馬堀海岸・津久井浜などの駅まわりでは歩き・自転車が成立し、 京急久里浜駅周辺や吉井地区のような、モータリゼーション後に開発されたニュータウンでは車が優勢。 同じ市でも、地区で姿が分かれます。BGで市全体を診て、HMで「どこに手を打つか」を絞る。

出典:室岡・堀川・谷口(2025)土木学会論文集D3。データは緯度経度つきのパーソントリップ調査。
横須賀市の15-minute HM。上が徒歩・自転車、下が自動車

環境が「歩ける」かを測り、実際に「歩いている」かを見る。ふたつを重ねて、地区ごとに手を打つ。

Publications

論文

2026
居住誘導区域における x-minute city の評価指標と可視化ツールの提案 —アクセシビリティと交通行動の両面から—主著
室岡太一・堀川倖・谷口守,土木学会論文集(土木計画学)土木計画学 優秀論文賞
2025
Differences in choice of transportation mode by residents of 15-minute cities according to destination amenities主著
Taichi Murooka, Kanta Kumeyama, Mamoru Taniguchi, Transportation Research Part A, Vol.196, 104452.
2024
なぜ歩いていけるにもかかわらず自動車を利用するのか —歩いていく x-minute city の実現に向けて—主著
室岡太一・久米山幹太・谷口守,都市計画論文集,Vol.59, No.3, pp.836–843.
AWARD 土木計画学 優秀論文賞を受賞 室岡太一・堀川倖・谷口守(2025)「居住誘導区域における x-minute city の評価指標と可視化ツールの提案 —アクセシビリティと交通行動の両面から—」土木学会論文集(土木計画学)