RESEARCH THEME ③
拠点は、市町村の線引きを越えてつながっている。
人の動きから拠点の階層を捉え直し、圏域全体で計画・データ・政策をマネジメントする。
人口が減っていくなかで、一つの市町村だけで生活サービスを支え切るのは難しくなります。だからこそ、 複数の市町村がまたがって拠点を計画する「広域」の視点が要る。ところが実際には、拠点の決め方は市町村ごとにバラバラで、 人の動き(到達圏)から見ると、拠点の階層性が広域的にちぐはぐになっています。 関連|室岡ほか(2022)人の動きに見る都市機能誘導区域の設定課題, 都市計画論文集。
茨城県全体を対象に、拠点を階層で積み上げながら「10分でそこに届く人口」を調べました。 鉄道駅などの上位拠点だけでは、徒歩・自転車で届く人はおよそ4割弱にとどまり、 7割をカバーするには自動車が要ります。ところが、役所・商業施設・コミュニティ施設…と下位の拠点を足していくと、 徒歩・自転車で拠点に届く人口はおよそ8割まで伸びていく。逆に、自動車のカバー率は早い段階で頭打ちになります。 つまり、歩いて暮らせる公平な都市構造には、下位の拠点を居住地の近くに置いていくことが効くのです。 論文|室岡・久米山・谷口(2023)広域にみる拠点階層別の到達圏人口, 都市計画論文集, Vol.58, No.3.
もっとも、下位の拠点は人口密度が低く、施設を維持できるとは限りません。そこで、ある拠点に施設を誘導したとき 周辺のアクセスがどれだけ改善するかを測る指標 PIAC(アクセス改善可能性)を提案し、 維持可能性(将来の立地確率)と並べて見ました。すると両者はおおむねトレードオフの関係にあり、 しかも「誘導」の計画的位置づけを持つのに、アクセス改善も維持も見込めない拠点が実在することが分かりました。 論文|室岡・松浦・谷口(2024)広域にみる拠点選定手法の提案, 土木学会論文集, Vol.80, No.11, 23-00307.
施設を誘導してもアクセスは改善せず、施設の維持も見込めない拠点は、市町村単位では気づけない。広域的に「診断」することが重要になる。
拠点の乱立を防ぎつつ、生活サービスへのアクセス弱者を救う——この両立には、居住地を起点として、 広域で誘導方針を見直していく必要があります。「届く(アクセス)」と「続く(維持)」を同じ土俵で測り、圏域全体でマネジメントする。それが、 人口減少下の拠点計画に求められる視点です。