RESEARCH THEME ②
拠点は「指定すればできる」ものではありません。
拠点候補地の実態と人の動きから、拠点が本当に人を集められているのかを問い直す。
人口減少に対して、都市機能を集めた拠点をつくり、公共交通で結ぶ「コンパクト+ネットワーク」が進められています。 ただ、拠点は地図の上で線を引けば成り立つわけではありません。すでに人が活動している場所は絶えず変わり続けますし、 区域を指定しても、そこに人が実際に訪れて活動しなければにぎわいは生まれない。 このテーマでは、拠点候補地の変化と人の動き(OD)を手がかりに、拠点の「にぎわい」をどう捉え、どう生むかを考えます。
まず、自治体の指定に頼らず、鉄道駅・役場・商業施設・コミュニティ施設・郵便局といった既存のストックから拠点候補地(CCA)を 茨城県全域で網羅的に抽出し、モバイル空間統計を使って2016年から2021年までの5年間の変化を調べました。 分かったのは、中山間部では鉄道駅よりも役場などの非駅型の候補地のほうが、実態としての階層(人の集まり)が高いケースが散見されること。 そして都市部では、中心的な候補地から滞留人口や施設が流出する一方、郊外部ではそれらが維持・増加していく―― つまり拠点候補地が全体として「分散化」している現象が、市町村ごとの計画では見えない形で起きていました。 変化の型でみると、滞留人口・施設がともに減る「退化型」が最も多く、水戸駅のような中心的な候補地でも、 都市機能と人々の活動がともに減っていることが示されました。 論文|室岡太一・松場拓海・川合春平・谷口守(2024)「拠点候補地の経年的変化実態 —広域的な機能補完に向けて—」土木学会論文集, Vol.80, No.1, 23-00096。
では、指定した拠点に人はどれだけ来ているのか。東京都市圏パーソントリップ調査(緯度経度つき)を使って、 自宅発の私事トリップをOD(発地→着地)で追いました。立地適正化計画では、施設を誘導した都市機能誘導区域(都誘区域)へ 人の動きを集めることが重要とされています。ところが実際に最も多いのは居住誘導区域内で完結する移動で、 多くの人が徒歩・自転車で訪れているのは都誘区域ではなく居誘区域でした。移動時間でみても、居誘区域への徒歩・自転車の移動は約8割が15分以内で完結する一方、 都誘区域への徒歩・自転車の移動は15分以内が67%にとどまる。つまり、維持・誘導が明記された都誘区域よりも、こうした位置づけのない居誘区域内の施設のほうが多く利用されており、 計画と実態のあいだにずれがあることが見えてきます。 論文|室岡太一・松浦海斗・谷口守(2025)「ODパターンから考える立地適正化計画の現状と課題 —居住誘導区域における x-minute city の実現実態—」都市計画論文集, Vol.60, No.3, pp.681-688。
拠点は「指定する」だけでは、にぎわいにつながらない。人が実際にどこへ動いているかを見ないと、計画と実態はすれ違ってしまう。
それでは、指定した拠点に人が訪れ、活動する「にぎわい」をどう生むか。公共交通が不便な地域では、これからも多くの人が自動車で拠点を訪れます。 そこで、集約型の駐車場(P)を起点に、駐車後に歩いて楽しむ「滞留」「購買」「回遊」「休憩」といった 多様な活動(X)を促す――という考え方を「P&X(Park & X)」として新たに提案しています。 これは、パークアンドライド(P&R)や、駐車後に歩いて楽しむP&Wを拡張したものです。ただし、ロードサイド店舗や大型ショッピングセンターのように単一の施設内で活動が完結する形を前提とするものではなく、駐車後の歩行と活動を既存市街地の公共空間・街路空間へ広げることを狙いとしています。 駐車場と拠点が一体的に整備されたつくばセンター(7駐車場・計3,809台)を対象に、来街者アンケートから満足度の要因を分析しており、 この検討は現在も継続して取り組んでいるテーマの一部です。 講演集|室岡太一・堀川倖・谷口守「P&X:ローカル拠点における集約型駐車場(P)の活動(X)促進可能性 —歩いて暮らせる生活の質向上を目指して—」第72回土木計画学研究発表会・講演集, 整理番号07-08。
まとめると、人口減少下の拠点は「作る/指定する」だけでは足りません。拠点候補地は指定と無関係に分散化し、 指定した都誘区域を徒歩・自転車や公共交通で訪れる人は多くない。だからこそ、拠点に人が訪れ、活動する「にぎわい」をどう生むかが、 これからの拠点計画に問われる課題です。人の動きの実態から拠点を捉え直し、駐車場のような身近な起点から活動を促していく。それが、このテーマで探る方向です。