都市計画のデータ分析(全20回)
OD・人の動きの分析
-「どこからどこへ」を表で読む-
第 17 回 第Ⅳ部|時系列・応用
OD表・パーソントリップ調査の基本構造を理解し、
滞在・流動を読み解けるようになる
今日の主役
OD表(発地×着地)の構造とパーソントリップ調査、拡大係数の考え方
なぜ重要か
「どこに住んでいるか」だけでなく「どう動いているか」が都市構造の実態を映すから
読み方の基本
行が発地、列が着地。対角セル(A→A等)は域内で完結する動き、非対角セルは地区をまたぐ動きを表す。
STEP 1 OD表を作る
パーソントリップ調査などの個票データから、発地×着地のクロス集計表を構築する。
STEP 2 拡大係数をかける
調査サンプルに拡大係数(母集団を推計する重み)をかけ、実際のトリップ数の規模に直す。
STEP 3 パターンごとに読む 域内完結(対角)と域外移動(非対角)を分け、パターン別に交通手段構成などを重ねて見る。
ODパターン(域内完結/域外移動)ごとに
代表交通手段の構成を比較し、居住誘導区域の実態を検証
使われている手法
OD表の構築、ODパターン別の交通手段構成の集計(今日の内容そのまま)
問い
居住誘導区域に住んでいれば、実際に「域内完結・徒歩移動」のx-minute city的な生活になっているのか
室岡太一・松浦海斗・谷口守 (2025)「ODパターンから考える立地適正化計画の現状と課題-居住誘導区域におけるx-minute cityの実現実態-」都市計画論文集, 第60巻, 第3号, pp.681-688, DOI: 10.11361/journalcpij.60.681, 図-1.
図-1 ODパターン別の代表交通手段構成
読み方 域内完結・域外移動それぞれで、徒歩・自転車・自動車・公共交通の構成比を積み上げで比較している。
この図から 域内完結でも自動車利用が一定割合を占め、「近い=歩く」とは限らない実態が見える。
① 拡大係数の扱い サンプルを母集団に拡大するための重み(拡大係数)を誤ると、全体の規模そのものを見誤る。
② 「代表交通手段」への集約 1トリップを1手段に集約すると、park&ride等の複数手段利用の実態が消えてしまう。
③ 平日・休日、時間帯の違い 同じOD表でも、平日・休日・時間帯によって傾向が大きく変わる点に注意する。
プロンプト例 1
「パーソントリップ調査データからOD表を作って、発地×着地パターン別に交通手段構成を集計して」
プロンプト例 2
「域内で完結する移動の割合が高い地域・低い地域を比較して、それぞれの交通手段構成の違いを教えて」
※ 拡大係数を適用した後の合計トリップ数が、公表統計と大きくズレていないか確認すると、推計の妥当性を確かめられる。
OD表は「どこからどこへ」を映す鏡。
対角×非対角で人の動きの構造を読む。
復習リンク
第6回 クロス集計と検定 / 第13回 バッファと到達圏
次回(第18回)
データ分析の失敗例① —— 課題設定の失敗
使うデータ(オープンデータ)
東京都市圏交通計画協議会「第6回 東京都市圏パーソントリップ調査(平成30年)」の公開集計を使おう。目的種類別・代表交通手段別のOD表はe-Stat から、地域を絞った可視化は「東京PTインフォグラフ」からも触れられる。目的は広域論ではなく、人の移動データに慣れること。
基本課題
1つの都市(市区町村)に絞り、①発地×着地のOD表を作る ②地図上にデザイアライン(OD間を線で結び、太さで移動量を表すフロー図)を描く。主要な数本の流れが見えれば十分。
発展課題
そのフロー図から読み取れる問いを1つ立てよう。仕上げに、その問いが誰の意思決定に効くかを1文で添える(例:自治体の公共交通担当者のダイヤ・路線の判断)。
使用データは無償のオープンデータに限る。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える(AIに頼る前に) ②AIの出力は別の方法で検算し、再現性を確かめる ③Excelは数式を残す/コードは # でメモを残す ④「作る」で終わらせず、問いへの答えまで自分で出す