都市計画のデータ分析(全20回)
カーネル密度推定
-点の集まりを「面」の地図にする-
第 15 回 第Ⅲ部|空間分析
加重KDE(拡大係数)、カーネル関数・バンド幅の設計ができるようになる
今日の主役
点データの密度推定(カーネル密度推定)と、重み・カーネル関数・バンド幅の設計
なぜ重要か
バンド幅と重みの決め方ひとつで、同じ点データでも「見え方」が大きく変わるから
同じ点データでも 点を密度に変換して「面」にすると、どこに集中しているかという傾向が一目でわかるようになる。
カーネル密度推定とは 1点1点の周りに山型の関数(カーネル)を置き、すべて重ね合わせて足し合わせることで、点の集まりを連続的な「密度の面」に変換する手法。
バンド幅の役割
山の裾野の広がり幅(バンド幅)が狭いと尖った密度に、広いとなだらかな密度になる。同じ点データでも結果の見え方が変わる。
単純な点の数ではなく、拡大係数を重みとして使うことで、調査の重み付けを反映した密度になる
重み:拡大係数
トリップデータが持つ拡大係数(サンプルの重み)を、そのままカーネル密度推定の重みとして使う(加重KDE)。
カーネル関数
四次関数カーネル(Quartic kernel)を使用。点の中心ほど重く、離れるほど滑らかに重みが減る形状。
バンド幅の設定 Silverman's rule of thumb(シルバーマンの経験則)によりバンド幅を設定する。データの散らばり具合から自動的に幅を決める代表的な方法。
トリップデータに密度推定(KDE)を適用し、
x-minute HM(Heat Map)として交通手段別の移動発生地点を地図化
やったこと
徒歩・自転車トリップと自動車トリップ、それぞれの発生地点に密度推定を適用し、密度を別々にヒートマップ化。
問い
地区単位でみたとき、徒歩・自転車と自動車、どちらの手段によるトリップが優勢な場所はどこか
室岡太一・堀川倖・谷口守 (2025)「居住誘導区域におけるx-minute cityの評価指標と可視化ツールの提案―アクセシビリティと交通行動の両面から―」土木学会論文集D3, 図-7.
図-7 横須賀市の15-minute HM(左:徒歩・自転車/右:自動車)
読み方 色が濃いほど人の動きの密度が高い。
この図から 徒歩・自転車(左)は鉄道駅周辺に集中、自動車(右)はモータリゼーション後に開発されたニュータウン等で高密度。
① バンド幅の恣意性 バンド幅を変えると密度の見え方は大きく変わる。機械的な経験則だけに頼らず、複数のバンド幅で結果を確認する。
② 境界効果 調査対象範囲の端では、周囲に参照できる点が少なくなるため密度が過小評価されやすい。
③ 密度≠率 密度が高いのは「その場所に人・トリップが多い」だけであり、全体に占める割合(率)とは異なる指標であることに注意する。
プロンプト例 1
「この座標データ(緯度経度と重み)に加重KDEを適用するコードを書いて。カーネルは四次関数カーネルを使いたい」
プロンプト例 2
「バンド幅を3パターン(狭い・Silverman's rule of thumb・広い)変えて、密度の見え方を比較して」
※ バンド幅の選定はAIの初期提案を鵜呑みにせず、複数パターンを見比べたうえで自分で判断する。
カーネル密度推定は、バンド幅と重みで見え方が決まる。
復習リンク
第12回 コロプレス図 —— どちらも「地図化」の技法だが、コロプレス図は行政区域単位、KDEは連続的な密度の面で表す点が異なる
次回(第16回)
経年変化を追う —— 2時点比較を「型」に分ける
基本課題
国土数値情報の施設ポイント(コンビニ・医療機関など)やG空間情報センターの人流オープンデータで、重みなしのシンプルなKDE密度地図を作り、立てた問いに答える。
例:自分の市区町村でコンビニはどこに集中しているか。
発展課題(イシュードリブン)
作った密度地図をもとに、次の2つを1〜2文ずつで考える。①この地図は誰のどんな意思決定を助けられるか。②どんな現象ならKDEが有用で、逆に不適切なのはどんな場合か(密度≠率の観点で)。
使用データは無償のオープンデータに限る(有償データやアンケートの新規実施は不要)。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える(AIに頼る前に) ②AIの出力は別の方法で検算し、再現性を確かめる ③Excelは数式を残す/コードは # でメモを残す ④「作る」で終わらせず、問いへの答えまで自分で出す