都市計画のデータ分析(全20回)
バッファと到達圏
-「届く範囲」を自分で描く-
第 13 回 第Ⅲ部|空間分析
直線バッファとネットワーク到達圏を使い分け、
到達圏人口(メッシュ按分)を算出できるようになる
今日の主役
直線距離バッファ、道路ネットワークに基づく到達圏、メッシュ按分による到達圏人口の算出(第11回の空間操作との合わせ技)
なぜ重要か
「◯m圏内」「◯分圏内」はあらゆる分野で頻出。よく使うので、ここで手法を固めておこう
直線距離バッファ 拠点を中心とした円を描くだけの単純な方法。山・川・鉄道での分断を無視 —— 実際より広く(あるいは違う形に)到達圏を見積もる
ネットワーク到達圏 道路網を実際にたどった移動時間・距離で算出 —— 現実の生活行動に近い
STEP 1 到達圏の作成
直線距離バッファ(簡易・過大評価しがち)か、道路ネットワーク上で拠点から一定時間・距離で到達できる範囲(実態に近い)かを、目的に応じて選ぶ。
STEP 2 到達圏人口の算出
到達圏ポリゴンと人口メッシュ(第11回)を重ね、重複面積で按分して人口を集計する。
使い分けの目安 概算・スクリーニングは直線バッファで素早く、施設配置の検討など精度が要る場面はネットワーク到達圏で丁寧に。
鉄道駅・役所・コミュニティ施設など拠点の階層ごとに、
徒歩・自転車/自動車の到達圏を描き、メッシュ人口を面積按分してカバー人口を算出
使われている手法
ネットワーク到達圏の作成、人口メッシュとの重複面積計算、面積按分による到達圏人口の算出(今日の内容そのまま)
含意
拠点の階層ごとに到達圏人口の分布を茨城県全域という広域で比較し、公平性に配慮した都市構造を検討するための基礎資料を提供
室岡太一・久米山幹太・谷口守 (2023)「広域にみる拠点階層別の到達圏人口-公平性に配慮した都市構造を見据えて-」都市計画論文集, 第58巻, 第3号, pp.1501-1507, DOI: 10.11361/journalcpij.58.1501, 図-2.
図-2 実際の到達圏(徒歩・自転車)と直線距離バッファ、メッシュとの重複
読み方 破線=直線バッファ、青=道路網に沿った到達圏、オレンジ=メッシュとの重なり(按分対象)。
この図から 山地では直線バッファが実際の到達圏より大きく広がり、過大評価しがちだと一目でわかる。
① 直線バッファとネットワーク到達圏の混同 「◯km圏内」を安易に円で描いてしまうと、山・川・鉄道で分断される地域では実態と大きく異なる。目的に応じて使い分ける。
② 到達圏の重複による二重計上 複数拠点の到達圏が重なる地域の人口を、それぞれの拠点にそのまま加算すると水増しになる。
③ 圏域内≠利用 到達圏に入っていることと、実際にその施設を利用していることは別の情報。行動データ(第17回)で補完する。
プロンプト例 1
「拠点からの直線距離バッファと、道路ネットワークを使った到達圏、両方を計算するコードを書いて」
プロンプト例 2
「到達圏ポリゴンと人口メッシュを重ねて、面積按分で到達圏人口を計算して」
※ ネットワークデータの整備状況(道路の欠落・一方通行の扱い)は、結果を鵜呑みにせず事前に確認する。
到達圏は「直線距離」ではなく道路ネットワークで測るのが基本。
メッシュ按分と組み合わせれば、到達圏人口というものさしになる。
復習リンク
第11回 空間操作の基本(按分のやり方はここで確認)
次回(第14回)
独自指標のつくり方 —— 現象を数式に落とす
基本課題
国土数値情報の「鉄道駅」または「医療機関」と、e-Statのメッシュ人口を使い、拠点から一定距離(例:800m)の直線バッファを描いてバッファ人口を数え、立てた問いに答える。
例:駅から徒歩圏に住む人はどれくらいか。
発展課題
OpenStreetMapの道路データでネットワーク到達圏も計算し、直線バッファとの差を比べる。仕上げに、①その工夫でオリジナリティが出せたか、②結果が誰の役に立ちそうか、のどちらかを1文で。
使用データは無償のオープンデータに限る。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える(AIに頼る前に) ②AIの出力は別の方法で検算し、再現性を確かめる ③Excelは数式を残す/コードは # でメモを残す ④「作る」で終わらせず、問いへの答えまで自分で出す