都市計画のデータ分析(全20回)
コロプレス図
-単純だが、いちばん伝わる地図-
第 12 回 第Ⅲ部|空間分析
率への正規化・階級区分・カラースケールを設計し、
地図から格差を測るところまで学ぶ
前半の主役
実数ではなく率で塗る、階級区分の決め方、連続的な配色の設計
後半の主役
塗った分布の偏りを、ローレンツ曲線とジニ係数という1つの数値で測る
第1回の教訓の空間版
「同じ数値でも見せ方で印象が変わる」——これは棒グラフや軸の話だけではない。地図も塗り方ひとつで伝わる意味が変わる。
注意 人口3万人の区と20万人の区を実数のまま塗ると、後者が単に「濃い」だけの地図になり、比較の意味を失う。
① 率への正規化
実数で塗らない
人口・面積などで割った密度や割合を使う。実数のままだと大都市が目立つだけになる。
② 階級区分
値をいくつの段階に分けるか
等間隔・分位(等量)・自然な区分(ジェンクス法など)。区分の切り方で地図の印象が変わる。
③ カラースケール
配色の設計
1つの系統色を薄い→濃いで連続的に変化させる。虹色のような多色は大小関係を誤解させやすい。
この3つを決めて初めて、コロプレス図は「正しく比較できる地図」になる。
ポイント ③と④の選び方だけで、同じデータから受ける印象は大きく変わる。だからこそ、選んだ理由を説明できるようにしておく。
清水宏樹・室岡太一・谷口守 (2022)「東京都市圏における15-minute cityの実現実態-生活サービス拠点としての都市機能誘導区域の可能性-」都市計画論文集, 第57巻, 第3号, pp.592-598, DOI: 10.11361/journalcpij.57.592, 図-1.
図-1 移動目的(通勤・買物)×代表交通手段/全交通手段別の15分圏内移動割合
読み方 15分以内で移動が完結する割合で市区町村を塗り分けたコロプレス図。4枚とも同じ配色・階級。
この図から 徒歩・自転車では通勤より買物の方が濃い範囲が広く、全交通手段に広げると外縁部も濃くなる。目的や手段で「15分の届きやすさ」が違うと読める。
松浦海斗・室岡太一・宗健・谷口守 (2026)「個人の認識に着目した全国の居住地徒歩圏における施設立地の格差」土木学会論文集, 第82巻, 第1号, 論文ID 24-00151, DOI: 10.2208/jscejj.24-00151, 図-1・図-2.
図-1 徒歩圏立地確率の全国分布(商業機能)
図-2 各機能のローレンツ曲線とジニ係数
コロプレスの先へ 地図(図-1)だけでは偏りを数値で比べにくい。自治体を立地確率の低い順に並べ累積比率を描いたのがローレンツ曲線(図-2)で、45度線から離れるほど偏りが大きい。その乖離を0〜1にしたのがジニ係数(1に近いほど不平等)。
① 実数で塗ることの問題
人口・件数などの実数をそのまま塗ると、単に人口が多い地域(大都市・大自治体)が濃く目立つだけの地図になり、「その地域固有の傾向」が読み取りにくい。率・密度に正規化すると、地域ごとの傾向が見えてくる。
② 階級区分の恣意性
同じデータでも、等間隔で区切るか、分位(データ件数が均等になるよう)で区切るかで、地図の見た目の「格差の大きさ」の印象が変わってしまう。区分方法を明記し、複数の切り方を試してから選ぶ。
注意 出てきた地図の階級区分・配色・母数(何で割った率か)を自分で確認すると、都合よく見える設定を無意識に選んでいないか点検できる。
実数ではなく率で塗る。階級区分と配色は「選び方」を説明できるようにする。
塗った偏りは、ローレンツ曲線とジニ係数で数値としても測れる。
今日の要点
コロプレス図は、第1回の可視化チートシートにあった「グラフは目的で選ぶ」という考え方の空間版。地図も「何を伝えたいか」から設計する。
次回(第13回)
バッファと到達圏 —— 「届く範囲」を自分で描く
基本課題
e-Statや国勢調査から市区町村別の人口・世帯数を探し、率に正規化した指標(例:高齢化率、人口密度)でコロプレス地図をつくる。実数のまま塗った地図と見比べ、立てた問いに自分の言葉で答える。
例:自分の都道府県で高齢化が進む市区町村はどこか。
発展課題
階級区分の方法を変える(例:等間隔→分位)工夫を1つ加え、印象がどう変わるか比べる。仕上げに、①その工夫でオリジナリティが出せたか、②結果が誰の役に立ちそうか(例:自治体の高齢福祉担当者)、のどちらかを1文で。
使用データは無償のオープンデータに限る。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える(AIに頼る前に) ②AIの出力は別の方法で検算し、再現性を確かめる ③Excelは数式を残す/コードは # でメモを残す ④「作る」で終わらせず、問いへの答えまで自分で出す