都市計画のデータ分析(全20回)

空間操作の基本と合わせ技

-結合・クリップ・最近傍でデータを紐付ける-

第 11 回 第Ⅲ部|空間分析

1

今日のゴール

一つひとつは単純合わせ技で分析になる。
遊んで慣れよう

今日の主役

空間結合・属性結合・クリップ・ディソルブ・最近傍探索などの基本操作

前提知識

GISソフトまたはPythonでの地図データ(点・面)の読み込み経験があるとなお良い

※本講義は代表的な操作の使いどころを整理する回。各操作の内部アルゴリズムや個別ソフトの操作手順は範囲外。

2

導入バラバラのデータは、そのままでは比べられない

Before 別々に存在する 点データ(施設) 面データ(誘導区域) 空間操作で紐付ける 区域内外で施設数を比較できる

点データ(施設・トリップ)と面データ(区域・メッシュ)は、それぞれ単体では位置関係を語れない

発想 「どの点がどの面に入るか」「どこが一番近いか」を機械的に判定する操作を組み合わせれば、別々のデータがひとつの分析になる。

3

概念代表的な空間操作を整理する

空間結合

位置関係(含む・重なる等)で属性をつなぐ

ID

属性結合(マージ)

共通のキー(ID等)で表どうしを横につなぐ

クリップ

指定範囲の外側を切り落とし対象だけ残す

ディソルブ

共通属性の面の境界を溶かして1つに

最近傍探索

各点からもっとも近い点・面を見つける

オーバーレイ/座標系統一

面を重ねて演算。前提として測地系・座標系をそろえる

面積按分

面の重複面積の比で、人口などの値を割り振る

※ どれも単純な判定の組み合わせ。面積按分は到達圏人口の算出などで、第13回の合わせ技として使う。

4

手法実務では、こう組み合わせる

① 属性結合で下ごしらえ 共通IDで台帳データをつなぐ ② 空間結合で位置を紐付け 点がどの区域に入るか判定 ③ クリップで対象範囲に絞る 分析エリアの外側を除く ※ どの順で組むかは分析の目的次第。まずは「何と何を、何のキーでつなぐか」を紙に書き出す

コツ

複雑に見える分析も、分解すれば単純な操作の積み重ね。1操作ずつ結果を目で確かめながら進めると事故が減る。

5

研究例人の動きを都市機能誘導区域に紐付ける

パーソントリップ調査の着トリップ(点データ)
都市機能誘導区域(ポリゴンデータ)に空間結合し、拠点への人の動きを分析

使われている手法

点データ(着トリップ)とポリゴンデータ(誘導区域)の空間結合により、区域ごとの着トリップ数を集計

ポイント

単独の自治体だけでなく、都市圏という広域スケールで対象地域を設定している

室岡太一・小林泰輝・谷口守 (2022)「人の動きに見る都市機能誘導区域の設定課題-広域的な視点から-」都市計画論文集, 第57巻, 第3号, pp.1218-1225, DOI: 10.11361/journalcpij.57.1218.
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研究例空間結合の考え方 —— 点を区域に紐付けて数える

誘導区域 A 誘導区域 B 区域内の施設点 区域外の施設点 内か外か を判定 区域ごとに集計 区域 A 3 件 区域 B 2 件 区域外 2 件

図 点データ×誘導区域の空間結合(模式図)

読み方 点が「どの区域の内側に入るか」を1点ずつ判定し、区域ごとに数える。これが空間結合の基本。

この図から

紐付けて集計すれば区域間で件数を比べられる。PTの動きを誘導区域に結ぶ研究(室岡・小林・谷口 2022)でも使う操作。

7

落とし穴使う前に知っておくこと

① 座標系の不一致 異なる測地系・座標系(例:緯度経度と平面直角座標系)のデータをそのまま結合すると、位置が実際とずれる。結合前に座標系(CRS)をそろえておくと、位置ずれを防げる。

② 結合キーの重複 属性結合で1つのキーに対し複数行が対応する「1対多」の関係があると、結合後に行数が想定以上に増殖する。結合前にキーの重複有無を確認する。

8

AIアシスタントと使うなら

プロンプト例 1

「この2つのシェープファイル(点データと面データ)を空間結合するPythonコードを書いて。座標系が違う場合の統一手順も含めて」

プロンプト例 2

「クリップとオーバーレイの違いを、それぞれ何が残るかに注目して教えて」

※ 生成されたコードで座標系・結合キーの指定が正しいかは、自分の目でデータを確かめると安心できる(前ページの落とし穴を参照)。

9

まとめ次回予告

一つひとつは単純合わせ技で分析になる。
遊んで慣れよう

復習リンク

第Ⅱ部 表データの分析 —— 属性をキーでつなぐ・集計単位をそろえる発想は、空間結合にもそのまま生きる

次回(第12回)

コロプレス図 —— 単純だが、いちばん伝わる地図

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Workオープンデータで練習する

基本課題

国土数値情報の都市機能誘導区域ポリゴンと施設点(医療機関・学校など)を空間結合し、各区域内の施設数(または区域内人口)を数えて区域間で比べ、立てた問いに答える。
例:区域内に医療機関がどれだけ集まっているか。

発展課題

別の施設種別を追加するなど、自分なりの工夫を加える。仕上げに、①その工夫でオリジナリティが出せたか、②結果が誰の役に立ちそうか(例:立適を担当する自治体職員)、のどちらかを1文で。

使用データは無償のオープンデータに限る。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える(AIに頼る前に) ②AIの出力は別の方法で検算し、再現性を確かめる ③Excelは数式を残す/コードは # でメモを残す ④「作る」で終わらせず、問いへの答えまで自分で出す

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