都市計画のデータ分析(全20回)

多変量③:要因分析

−回帰分析で「効いている要因」を測る−

第 10 回 第Ⅱ部|統計分析

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今日のゴール

複数の要因のうち、何がどれくらい効いているかを、
回帰分析で読み解けるようになる

今日の主役

回帰分析。連続量には重回帰、質的アウトカムにはロジスティック回帰。

前提知識

第6回(クロス集計)・第7回(相関と回帰の考え方)

※質的アウトカムの回帰は二択(二項ロジット)を中心に扱う。3択以上の多項ロジット、ランダム効用理論、IIA仮定、最尤推定の詳細は発展として末尾で触れる。

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手法重回帰 —— 複数の要因で連続量を説明する

y x 単回帰:説明変数は1つ

重回帰 連続量(例:徒歩分担率、所要時間)を、複数の説明変数で線形に説明する。各変数の偏回帰係数は「他を一定にしたときの効き」を表す。

標準化係数で「効きの大きさ」を変数間で比べ、決定係数 R² で「説明できた割合」を見る。
ただしアウトカムが質的(選ぶ/選ばないの0/1やカテゴリ)なら、そのまま直線を当てるのは不自然 → 次からのロジスティック回帰へ。

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導入質的アウトカムでは、なぜふつうの回帰でだめか

重回帰は連続量向けの手法。結果が 0 か 1(自動車を使う=1/使わない=0)の質的アウトカムに直線をあてはめると——

問題 予測値が 0〜1 の範囲を飛び出し、「確率」として解釈できない

1 0 直線:1を超える 0を下回る
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考え方S字カーブで「確率」をつなぐ

1 0 ロジスティック曲線 説明変数(例:駅からの距離)→

発想の転換 0/1 そのものではなく、「1になる確率」を説明する。確率は 0〜1 に収まるS字で表す。

このS字を与えるのは「ロジスティック関数」(ロジット変換の逆関数、逆ロジット)。ロジット変換は確率をオッズの対数に変える変換で、その逆をたどるとS字が得られる。数式は次ページ。

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モデル二項ロジットの式

log ( p / (1−p) ) = β₀ + β₁x₁ + β₂x₂ + …

左辺

p は「1を選ぶ確率」。p/(1−p) はオッズ(起こりやすさの比)。その対数をとる。

右辺

ふつうの回帰と同じ形。係数 β がプラスなら選びやすく、マイナスなら選びにくくなる。

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解釈オッズ比で読む

1 (差がない基準) オッズ比 > 1 選びやすくなる オッズ比 < 1 選びにくくなる 1.8 目的地に商業施設あり 0.6 降雨

読み方のコツ

「係数が有意か(偶然でないか)」と「オッズ比がどれくらい大きいか(効果の大きさ)」は別もの。両方を合わせて読めているだろうか。

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落とし穴使う前に知っておくこと

① 変数の統制 「距離だけ」で説明すると見かけの効果を拾う。関連しうる要因もモデルに含めて統制する。

② サンプルの偏り 1と0の比率が極端(例:99対1)だと推定が不安定になる。

③ 因果ではない 係数が有意でも「原因」とは限らない。解釈は先行研究と突き合わせながら慎重に。

〔発展〕3択以上なら多項ロジット(前提のランダム効用理論・IIA仮定、最尤推定は範囲外。名前だけ押さえておきたい)。

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研究例15分都市の住民は、なぜその交通手段を選ぶのか

目的地の施設(スーパー・医療・金融など)ごとに、交通手段の選択
2本のロジットモデルで分析 —— 個人属性を統制したうえで施設の効果を推定

使われている手法

二項ロジスティック回帰(今日の内容そのまま)

ポイント

「統制変数を入れることの重要性」が結果の解釈で効いてくる

Taichi Murooka, Kanta Kumeyama, Mamoru Taniguchi (2025) "Differences in choice of transportation mode by residents of 15-minute cities according to destination amenities: Break away from car dominant city" Transportation Research Part A: Policy and Practice, Vol.196, 104452, DOI: 10.1016/j.tra.2025.104452.
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Taichi Murooka, Kanta Kumeyama, Mamoru Taniguchi (2025) "Differences in choice of transportation mode by residents of 15-minute cities according to destination amenities: Break away from car dominant city" Transportation Research Part A: Policy and Practice, Vol.196, 104452, DOI: 10.1016/j.tra.2025.104452, 図-4.

研究例結果を読む —— オッズ比と信頼区間

Odds Ratios with Confidence Intervals for Different Facilities

Fig. 4 Odds ratios and 95% CIs for the 3 amenities(n=975)

読み方 点がオッズ比、横棒が信頼区間。区間が1をまたぐものは有意でないと判断する。

この図から

距離が短いほど徒歩・自転車を選びやすく、個人属性を統制しても傾向が残る。

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AIアシスタントと使うなら

プロンプト例 1

「この個票データ(CSV)で、自動車利用(0/1)を目的変数、距離・年齢・世帯構成を説明変数にした二項ロジスティック回帰をして、オッズ比の表にして」

プロンプト例 2

「この推定結果を、統計に詳しくない自治体職員に説明する文章にして。有意性と効果の大きさを区別して」

※ 出力された係数・解釈は、自分の目で検証できているだろうか(第7回の落とし穴チェックリスト参照)。

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まとめ次回予告

要因分析は回帰で。連続量は重回帰、質的アウトカムはロジスティック回帰
読み方は 有意性 × 効果の大きさ のセットで。

復習リンク

第9回 多変量②:類型化 / 第8回 多変量①:次元縮約

次回(第11回)

空間操作の基本と合わせ技 —— 結合・クリップ・最近傍でデータを紐付ける

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Work手を動かして練習する

基本課題

好きな問いを立て、回帰(連続量なら重回帰、0/1なら二項ロジスティック回帰)を実行できるだろうか。係数(オッズ比)の意味を自分の言葉で解釈できるだろうか。個票の質的アウトカムなら構造を模したダミーデータで可。

発展課題

説明変数を1つ足す・群で分けるなどの工夫を加えると、係数や解釈はどう変わるだろうか。仕上げに、①その工夫でどんなオリジナリティが出せたか、②この結果が誰の役に立ちそうか、のどちらかを1文で述べて締めくくれるとよい。

個票が公開されない回のためダミーデータで可(他回はオープンデータに限る)。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える/②AIの出力は別の方法で検算し再現性を確かめる/③Excelは数式を残す・コードは # でメモを残す/④「作る」で終わらせず問いへの答えまで自分で出す。

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