都市計画のデータ分析(全20回)

多変量②:類型化

−クラスター分析で「型」を見つける−

第 9 回 第Ⅱ部|統計分析

1

今日のゴール

クラスタ分析の流れを理解し、
類型に意味のある名前をつけられるようになる

今日の主役

クラスタ分析(変数選択→標準化→クラスタリング→命名)

なぜ重要か

「似た者どうし」を機械的に分けるだけでなく、政策的に意味のある集団として語るため

2

導入クラスタ分析の4ステップ

① 変数選択 分類の軸になる 変数を絞り込む ② 標準化 単位の違う変数を 揃えて比較可能にする ③ クラスタリング 似た者どうしを 機械的にグループ分け ④ 類型の命名 各クラスタの特徴を 解釈し、名前をつける 機械的な処理 ―― → ―― 人による解釈

この流れの応用範囲

①〜③で得られたクラスタを「ペルソナ」として肉付けすれば、政策提案やサービス設計に使える人物像のセットになる。

3

手法クラスタリングの実務ポイント

STEP 1-2 変数選択と標準化

相関が強すぎる変数を重複して入れない。単位(人・円・分など)が異なる変数は標準化してから距離を計算する。

STEP 3 クラスタリング

k-means法や階層クラスタリングなどの手法で、クラスタ数を複数パターン試しながら分ける。

STEP 4 命名とペルソナ分析 各クラスタの平均的な特徴(年齢層・所得・行動パターンなど)を読み取り、一目で伝わる名前を付ける。

4

研究例鉄道駅の徒歩圏は、来訪者でどう違うのか

人の動きのデータから、来訪者の個人・移動特性に着目して
東京都市圏(東京都区部を除く)の鉄道駅徒歩圏を11の類型に分類

使われている手法

クラスタ分析(今日の内容そのまま)、類型ごとの空間分布の可視化

ポイント

「A.トリップ集積_公共交通_複合型」のように、特徴を要約した名前を各類型に付与

久米山幹太・室岡太一・Golubchenko Stanislava・谷口守 (2023)「人の動きにみる鉄道駅徒歩圏の類型化-来訪者の個人・移動特性に着目して-」土木学会論文集, 第79巻, 第20号, 論文ID 23-20017, DOI: 10.2208/jscejj.23-20017.
5

久米山幹太・室岡太一・Golubchenko Stanislava・谷口守 (2023)「人の動きにみる鉄道駅徒歩圏の類型化-来訪者の個人・移動特性に着目して-」土木学会論文集, 第79巻, 第20号, 論文ID 23-20017, DOI: 10.2208/jscejj.23-20017, 図-3.

研究例結果を読む —— 11類型の空間分布

東京都市圏(東京都区部を除く)における鉄道駅徒歩圏11類型の空間分布図。都心(新宿駅)からの距離帯(10km・30km・50km)ごとに類型の分布パターンが色分けして示されている。

図-3 類型の空間分布

読み方 色が類型(A〜K)を表す。都心(新宿駅)からの距離帯(10km・30km・50km)と類型の分布を重ねて見る。

この図から

都心に近いほど「公共交通型」、郊外ほど「自動車依存型」が分布する傾向が読める。

6

落とし穴クラスタ分析を使う前に知っておくこと

① クラスタ数はデータが自動的に教えてくれない 「正解の数」はなく、分析者が目的や解釈のしやすさを踏まえて決める。

② 命名には主観が入る 同じクラスタでも分析者によって付ける名前は変わりうる。だからこそ、根拠となる数値も併せて示せているだろうか。

③ 安定性の確認 サンプルの一部を変えても似た類型が再現されるか、頑健性も確かめておきたい。

7

AIアシスタントと使うなら

プロンプト例 1

「この変数群でクラスタ分析をして、クラスタ数を3〜6パターンで比較して」

プロンプト例 2

「各クラスタの特徴を一言で表すネーミング案を提案して」

※ ネーミング案はたたき台として使い、実務・研究の文脈に合わせて自分の言葉で最終決定する。

8

まとめ次回予告

類型化は変数選択→標準化→クラスタリング→命名の4ステップ。
機械的な分類を、意味のある「型」に仕上げる。

復習リンク

第8回 多変量①:次元縮約 / 第6回 2変数の関係①:カテゴリ間

次回(第10回)

多変量③:要因分析 —— 回帰分析で「効いている要因」を測る

9

Workオープンデータで練習する

基本課題

問いを1つ立て(例:自分の地域とその周辺は、どんな型に分かれるか)、e-Statの地域別統計DBから市区町村の指標を数個選び、標準化してクラスター分析で類型化を試すと、どんな型が見えるか。

発展課題

指標やクラスター数を変えて類型化を工夫する。締めに、①オリジナリティが出せたか/②誰の役に立ちそうか(具体的に1つ)のどちらかを1文で。

使用データは無償のオープンデータに限る。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える(AIに頼る前に)/②AIの出力は別の方法で検算し再現性を確かめる/③Excelは数式を残す・コードは # でメモを残す/④「作る」で終わらせず問いへの答えまで自分で出す。

10
← → キー / クリックでページ送り