都市計画のデータ分析(全20回)
2変数の関係①:カテゴリ間
−クロス集計で「観測」と「期待」の差を読む−
第 6 回 第Ⅱ部|統計分析
クロス集計・独立性の検定・残差分析の3点セットを
使いこなせるようになる
今日の主役
クロス集計表 + カイ二乗検定(独立性の検定)+ 残差分析
なぜ重要か
「関連がありそう」を、見た目の印象ではなく数字で裏付けるため
発想 2つのカテゴリに関連がなければ、どの群も全体と同じ構成比(右=期待)に近づくはず。左の観測がそこからどれだけ離れるか、が読みどころ。
残差の役割
観測と期待のズレが大きいセルほど、意味のある差がありそう。期待度数=行合計×列合計÷全体合計。
STEP 1 クロス集計表を作る
2つのカテゴリ変数(例:居住地類型 × 満足度)を、行×列の表に集計する。
STEP 2 独立性の検定(カイ二乗)
表全体として「関連あり」と言えるか、偶然のばらつきでは説明できないかを確かめる。
STEP 3 残差分析 どのセルが期待より有意に多い/少ないかを、セルごとの調整済み残差で特定する。検定だけでは「表全体」までしか分からない。
居住地を施設立地パターンで5類型に分け、
各類型の居住満足度の構成比をクロス集計・検定・残差分析で比較
使われている手法
クロス集計+独立性の検定+残差分析(今日の内容そのまま)
ポイント
「近接している施設の種類」によって満足度の構成比がどう変わるかを、5類型で比較する
松浦海斗・室岡太一・宗健・谷口守 (2024)「徒歩圏の施設立地特性にみる居住満足度の要因分析-個人の主観によるx-minute cityの課題と展望-」都市計画論文集, 第59巻, 第3号, pp.860-867, DOI: 10.11361/journalcpij.59.860, 図-4.
図-4 居住地類型別の居住満足度の構成比
読み方 **は「期待より有意に多い」セル。全機能近接(A)は「大変満足」が**、施設不便(E)は「不満」側が**。
この図から
施設が徒歩圏に多いほど満足度が高い傾向が、印象だけでなく統計的にも裏づく。
① 期待度数が小さいセル 期待度数が5未満のセルがあると、カイ二乗検定の前提が崩れ、結果が不安定になりやすい。
② 「関連あり」は「因果あり」ではない 満足度が高い類型に住んでいるのか、満足している人がその類型を選んで住んでいるのか、この分析だけでは分からない。
③ 統計的に有意 ≠ 実質的に大きい差 サンプル数が多いと、わずかな差でも有意になりやすい。ポイント差そのものの大きさも合わせて見るとどうか。
プロンプト例 1
「この2つのカテゴリ変数のクロス集計表を作って、カイ二乗検定と残差分析まで実行して」
プロンプト例 2
「有意な差があるセルだけ色付けした表にして」
※ セルの度数が小さい部分は、検定の前提が崩れていないか自分でも件数を確認する。
カテゴリ同士の関連は
クロス集計 → 検定 → 残差分析 の3点セットで確かめる
復習リンク
第2回 記述統計と分布を読む / 第4回 アンケート・主観データ
次回(第7回)
2変数の関係②:連続量間 —— 相関と、群で符号が変わる生態学的相関
基本課題
問いを1つ立て(例:人口規模が大きい市区町村ほど持ち家率は低いか)、e-Statの地域別統計DBから市区町村データを取り、2つのカテゴリ変数に加工してクロス集計・カイ二乗検定を試すと、何が見えるか。
発展課題
別のカテゴリ変数を1つ加えて比較する。締めに、①分析にオリジナリティが出せたか/②結果が誰の役に立ちそうか(具体的に1つ)のどちらかを1文で。
使用データは無償のオープンデータに限る。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える(AIに頼る前に)/②AIの出力は別の方法で検算し再現性を確かめる/③Excelは数式を残す・コードは # でメモを残す/④「作る」で終わらせず問いへの答えまで自分で出す。