都市計画のデータ分析(全20回)
問題設定の力
- AIが分析する時代に、何を問うか -
第 5 回 第Ⅰ部|データと可視化の基礎
分析そのものより、「何を問うか」で差がつく時代。
良い問いの条件と、問いを立てる型を手に入れる
今日の主役
良い問いの3条件(新規性・有用性・検証可能性)と、問題設定の4つの型
考えてみたいこと
「このままだとどうマズいか」を自分の言葉で言えると、どんな良いことがあるだろう
コードを書く、集計する、図を描く。かつて差がついた工程は、誰でも手早くできるようになった。
残る差 実行が横並びになるほど、価値は「どんな問いを立てるか」に移っていく。
良い問いは、ひらめきを待つより、日々のインプットと、心が動く経験から育つことが多い。
論文や政策文書を「もっと社会がよくなるには」の視点で読み、自然や作品、日常の違和感にも目を向ける習慣が、種になる。
問いの源泉になりうるもの
学術論文や政策・計画文書をインプットしつつ、美しい自然・優れた作品・日常の些細な違和感に触れて心を動かす経験を積む。
読むときの視点
「このままだとどうマズいか」を、引用ではなく自分の言葉で言えるか
新規性
まだ誰も明らかにしていないか
有用性
誰の、どの意思決定を変えるか
検証可能性
手元のデータで確かめられるか
3つの掛け算で問いの価値が決まる。とくに有用性は「面白い」で止めず、
誰のどの判断を変えるかまで具体化できると強くなる。
実際の論文は型の掛け算になりがち。例:「歩けるのに歩かない」= ① × ③ × ④(次で確認)
① 前提を疑う型
問い:近くに施設があれば人は歩くのか? 型:政策が置く「近ければ歩く」を検証。変えた判断:距離でなく徒歩許容時間で圏域を設計する見方へ。
一節:実際に歩いているかは「モニタリングされてこなかった」。約11分を境に自動車利用が増加。
② 道具をつくる型
問い:拠点の乱立防止と弱者救済をどう両立して測るか? 型:物差しがない両立度を指標に落とした。変えた判断:居住地ベースで誘導方針を広域的に見直す視点へ。
③ 空白のマス目型
問い:全国の居住者は歩ける範囲に施設があるか? 型:対象を特定都市→全国、視点を居住者の主観へ。変えた判断:低所得・若年ほど不利な格差を可視化。
④ 節目に置く型
問い:国調人口と住基人口の差は何を語るか? 型:人口減の潮流と復興計画の節目に問いを置いた。変えた判断:一方だけ見ると過剰・過少なインフラ整備を招くリスクに注意。
1. 潮流 社会の大きな流れ
2. 制度 計画・制度の現在地
3. 既往の空白 まだ分かっていないこと
4. 意思決定リスク 放置すると起きる支障
例(国調・住基人口):一方だけ見て計画を組むと実態からずれ、過剰・過少なインフラ整備を招くおそれ。
分析の前に 誰のどの判断をどう変えるか、活用仮説を先に置くと問いがぶれにくい。
① 手法・データ先行 手元の道具から入ると、問いが目的を見失いやすい
② 検証できない問い 壮大でも、手元のデータで確かめられなければ閉じない
③ 無批判な紹介で終わる 要約で止まると、暗黙の前提を問い直せない
④ 誰の判断も変えない 結果が出ても動く人がいなければ、有用性を問い直す
プロンプト例 1 ── 前提をあぶり出す
「この政策文書が暗黙に前提としていることを列挙して。特に『誰もが同じ』と仮定していそうな点を挙げて」
プロンプト例 2 ── 有用性を反証させる
「この問いは、誰のどの意思決定を変える? 変えないと思う理由も挙げて反証して」
※ 問いを立てるのは自分。AIは前提の洗い出しや反論の相手(壁打ち)に使い、出力はそのまま採らず吟味する。
差がつくのは、何を問うか。
「このままだとどうマズいか」を自分の言葉で言い、活用仮説を先に置く
復習リンク
第4回 アンケート・主観データ(研究目的との整合)/第Ⅰ部の締め
次回(第6回)
2変数の関係①:カテゴリ間 —— クロス集計で「観測」と「期待」の差を読む
基本課題
国交省が無償公開する最新の政策文書(例:立適の運用指針等)を1つ読み、「このままだとどうマズいか」を自分の言葉で3行にまとめる。そこから問いを1つ立てて①〜④のどの型か分類し、その問いへの暫定的な答えも一言で出す。
発展課題
その問いの活用仮説を1文で書く(誰の、どの意思決定を、どう変えそうか)。仕上げに、①その問いに新規性が出せそうか、②誰の役に立ちそうか、のどちらかを一言添えて締めくくる。
使うデータは無償のオープン資料(国交省・e-Stat等)に限ると扱いやすい。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える(AIに頼る前に)/②AIの出力は別の方法で検算し再現性を確かめる/③Excelは数式を残す・コードは # でメモを残す/④「作る」で終わらせず問いへの答えまで自分で出す。