都市計画のデータ分析(全20回)
アンケート調査と層別抽出
- 研究目的に合った相手に聞く -
第 4 回 第Ⅰ部|データと可視化の基礎
アンケートの対象者の条件を研究目的とそろえ、
目的に合った層を取り出す(層別抽出)と、何が見えてくるかを理解する
今日の主役
研究目的と対象者条件の整合性、層別(層化)抽出の考え方、目的に合った層への絞り込み
なぜ大切か
「誰に聞いたか」がずれていると、集計がきれいでも問いには答えられないから
対象者は問いから決まる 問いに答えるうえで「どの人に聞けばよいか」を先に決めると、結果の解釈がぶれにくくなる。
同じ質問紙でも、対象者の条件しだいで結論が変わりうる。
層別抽出 母集団を意味のある層(例:施設までの距離)に分け、各層から必要な数を集める抽出のしかた。
単純な無作為抽出だと、注目したい層のサンプルが足りなくなることがある。層別なら各層を十分に確保できる。
STEP 1 問いから対象者条件を書き出す
「この問いに答えられるのはどんな人か」を言葉にする。条件が結果の解釈を左右する。
STEP 2 層を決めて抽出する
解釈に効く軸(距離・年齢など)で層を作り、各層で必要なサンプル数を確保する。
分析は目的の層に絞る 集計・比較は、問いに直接答える層(例:歩いていける層)に絞って行うと、結論が明快になる。
「歩いていける人がなぜ車を使うか」を問うため、
徒歩許容時間内に施設が立地する層(歩いていける層)に絞って交通行動の要因を分析
研究目的との整合
問いに答えるには「歩いていける人」だけが対象。施設立地と年齢で層別化抽出し、目的の層を確保
ポイント
対象者を目的に合わせて絞ったからこそ、近接しても車を選ぶ要因を取り出せた
室岡太一・久米山幹太・谷口守 (2024)「なぜ歩いていけるにもかかわらず自動車を利用するのか-歩いていくx-minute cityの実現に向けて-」都市計画論文集, 第59巻, 第3号, pp.836-843, DOI: 10.11361/journalcpij.59.836, 表-2・表-3.
読み方 「許容時間内に施設がある層」に対象を絞り、交通手段の決定要因を分析している。
この設計から
歩いていける層でも、徒歩到達時間が11分以上だと自動車を使いやすい、という知見が得られた。
① 目的と対象者がずれる 問いは「歩いていける人」なのに全員を集計すると、遠くて歩けない人の事情が混ざり、結論がぼやける。
② 注目層のサンプルが足りない 単純な無作為抽出だと、見たい層が少数になりがち。層別で各層を確保しておくと安心。
③ 層の切り方が恣意的になる 層の境目(何分で区切るか等)は結果に効く。根拠のある基準で決めると解釈が通りやすい。
プロンプト例 1
「この研究の問いに答えるには、どんな条件の人を対象にすればよいか、案を出して」
プロンプト例 2
「回答者を距離と年齢で層に分け、各層のサンプル数を集計して」
※ どの層に絞るか・層の境目をどう引くかは、研究目的に照らして自分で判断すると納得のいく設計になる。
アンケートは「誰に聞くか」が結論を左右する。
研究目的に対象者をそろえ、目的の層に絞ると問いに答えられる。
復習リンク
第3回 公的統計データの扱い(定義・カバレッジの確認)
次回(第5回)
問題設定の力 —— AIが分析する時代に、何を問うか
基礎課題
アンケート調査を用いた既存研究を3本以上集め、それぞれの対象者の条件(誰に・どう抽出したか)を確認し、研究目的・結果と整合しているかを1〜2行で言語化する。
発展課題
そのうち1本について、対象者の条件や層の切り方をどう変えると新規性・有用性が出そうかを考える。仕上げに、①どこにオリジナリティが出るか、②誰の役に立つか、のどちらかを1文で。
論文は無償で読めるもの(J-STAGE等)に限る。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える(AIに頼る前に)/②AIの出力は別の方法で検算し再現性を確かめる/③Excelは数式を残す・コードは # でメモを残す/④「作る」で終わらせず問いへの答えまで自分で出す。