都市計画のデータ分析(全20回)
公的統計データの扱い
- 参考にしつつ、鵜呑みにしない -
第 3 回 第Ⅰ部|データと可視化の基礎
目的に合った公的データを選び、
定義・カバレッジの違いを踏まえて鵜呑みにせず読めるようになる
今日の主役
統計の定義差とカバレッジの確認、二つの統計を突き合わせる経年比較、乖離の政策的な読み方
なぜ重要か
公的データは強力な参考。でも同じ「人口」でも統計で数え方が違い、鵜呑みにすると判断を誤るから
まずカタログを眺める どんな統計が公開されているかを一覧(カタログ)で把握すると、問いに合うデータを選びやすくなる。
同じテーマでも複数の統計が併存する。今日は身近な例として「人口」の2統計を取り上げる。
まず「何を知りたいか(問い)」から枝をたどって選ぶ。同じテーマでも複数の統計が併存する。
入口:統計は e-Stat、地図は 国土数値情報。ただし公的データも万能ではない —— 次からは「鵜呑みにしない」実例を見る。
45度線の使い方 2つの統計を散布図にして45度線と比較すれば、どちらが多く数えているかが一目で分かる。
線からの乖離幅・乖離率を経年で追うと、実態と届出のズレの拡大・縮小が見える。
STEP 1 定義とカバレッジの確認
各統計が「何を」「いつ」「どの基準で」数えているかを、まず統計局・自治体の定義に立ち返って確認する。
STEP 2 市区町村コードで突合
共通のコードで2つの統計を結合し、差分・乖離率を経年で計算する。
乖離の政策的な読み方 乖離が大きい・拡大している自治体は、実態把握のズレが政策判断に影響しうる場所として注視する。
原発事故の避難9町村を対象に、国調人口と住基人口の乖離を経年で追跡 ——
特殊イベント時に2つの統計がどう乖離するかを定量的に示す
使われている手法
2統計の経年突合、乖離率の推移分析(今日の内容そのまま)
含意
平常時とは異なる意味を持つ乖離を、政策現場でどう解釈すべきかを提示
佐藤玄佳・室岡太一・谷口守 (2024)「国調人口と住基人口の差異が持つ政策的意義-経年的な変化に着目して-」土木学会論文集, 第80巻, 第20号, 論文ID 24-20030, DOI: 10.2208/jscejj.24-20030, 図-5.
図-5 避難9町村における国調人口と住基人口の推移
読み方 2本の折れ線(国調・住基)を並べ、避難指示の解除などの前後で乖離幅の動きを追う。
この図から
避難のような特殊イベント下では、「住んでいる」と「届け出ている」の差が平常時より大きく開く。
① 定義の違いを確認する 国勢調査(実際の居住実態)と住民基本台帳(届出ベース)では、そもそも数えている対象が違う。
② 届出のタイムラグに注意 転出入の届出は実際の引っ越しより遅れて出されることがあり、月次の数字は実態より遅れる。
③ 特殊イベント時は意味が変わる 災害・避難などの局面では、平常時と同じ感覚で乖離を解釈すると誤る。
プロンプト例 1
「2つの人口統計を市区町村コードで突合し、差分と乖離率を自治体ごとに計算して」
プロンプト例 2
「乖離が大きい自治体を上位10件抽出して一覧表にして」
※ 結合キー(市区町村コード)のコード体系変更・合併履歴は、AI任せにせず自分で確認する。
公的データは強力な参考。
でも鵜呑みにせず、定義とカバレッジを確認してから使う。
復習リンク
第2回 記述統計と分布を読む(平均値と中央値の使い分け)
次回(第4回)
アンケート調査と層別抽出 —— 研究目的に合った相手に聞く
基本課題
カタログ(e-Stat)から似た指標を測る2つの統計を選ぶ(例:国調人口と住基人口)。市区町村コードで結合し、横軸・縦軸にとった散布図と45度線で、どちらが多いかを読む。
発展課題
別の年や自治体を1つ加える。仕上げに、①分析にオリジナリティを出せたか、②誰の役に立ちそうか(例:防災担当者、転居を検討する人)、のどちらかを1文で。
使用データは無償のオープンデータ(e-Stat等)に限る。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える(AIに頼る前に)/②AIの出力は別の方法で検算し再現性を確かめる/③Excelは数式を残す・コードは # でメモを残す/④「作る」で終わらせず問いへの答えまで自分で出す。