都市計画のデータ分析(全20回)
記述統計と分布を読む
- グラフでつかんだ傾向を、数字で裏付ける -
第 2 回 第Ⅰ部|データと可視化の基礎
代表値(平均・中央値・四分位)とばらつき(標準偏差)を使い分けて、
「平均だけでは代表できない」分布を正しく読めるようになる
今日の主役
代表値(平均・中央値・四分位数)、ばらつき(標準偏差・レンジ)、分布の歪み
なぜ重要か
平均値は少数の極端な値に引っ張られる。実態を知るには中央値・四分位とセットで見る必要があるから
大半は小さい値だが、ごく少数の突出した値が右に伸びている。
平均値はこの裾(すそ)に引っ張られて、中央値より右にずれる。
代表値 平均値・中央値。データの「中心」はどこか
四分位数
データを4等分する境目。中央値と合わせて分布の広がりを見る
ばらつき 標準偏差・レンジ(最大-最小)。散らばりの大きさ
STEP 1 代表値を出す
平均値と中央値の両方を計算する。2つが近ければ分布は素直、離れていれば歪みのサイン。
STEP 2 ばらつきを見る
標準偏差・レンジ・四分位範囲で散らばりを確認する。最小値・最大値まで見ると、外れ値の有無に気づける。
平均と中央値がかけ離れていたら 分布が大きく歪んでいる(少数の極端な値がある)サイン。中央値・四分位数を優先して読む。
都市機能誘導区域(拠点)への着トリップ数など人の動きに関する指標について、
平均値と中央値のどちらが実態を表すかを基礎統計量から確認する
使われている手法
基礎統計量の算出(平均値・標準偏差・最小値・四分位数・中央値・最大値、今日の内容そのまま)
ポイント
実数データ(着トリップ数)は歪みが大きく、代表値の選び方で拠点の印象が変わる
室岡太一・小林泰輝・谷口守 (2022)「人の動きに見る都市機能誘導区域の設定課題-広域的な視点から-」都市計画論文集, 第57巻, 第3号, pp.1218-1225, DOI: 10.11361/journalcpij.57.1218, 表-2.
| 統計量 | 着トリップ数(/日) |
|---|---|
| 平均値 | 14,571 |
| 標準偏差 | 14,312 |
| 最小値 | 3,003 |
| 第1四分位数 | 5,555 |
| 中央値 | 9,349 |
| 第3四分位数 | 15,406 |
| 最大値 | 80,245 |
表-2 拠点への着トリップ数の基礎統計量(n=118)
読み方 少数の突出した拠点が平均値を押し上げている。「平均的な拠点」を語るなら、中央値・四分位数を見るとどうなるだろうか。
① 平均値だけで比較する 少数の外れ値に引っ張られた平均値で語ると、実態と異なる印象を与える。中央値も併記すると、読み手が誤解しにくくなる。
② 外れ値を安易に除外する 値が大きいのは自然な現象であることも多い。除外するかどうかはその都度理由を考える。
③ 標準偏差だけでばらつきを語る 分布が大きく歪んでいると標準偏差は解釈しにくい。四分位数・レンジも合わせて見る。
プロンプト例 1
「この列の平均値・中央値・標準偏差・四分位数を計算して、一覧表にまとめて」
プロンプト例 2
「ヒストグラムと箱ひげ図を並べて表示して、外れ値がありそうか確認して」
※ 「平均は◯◯です」という出力を鵜呑みにせず、中央値や分布の形と合わせて自分で確かめると、思わぬ読み違いを避けられる。
平均値は少数の極端な値に引っ張られる。
中央値・四分位数とセットで、分布の実像を読む
復習リンク
第1回 可視化チートシート(分布のグラフ選び)
次回(第3回)
公的統計データの扱い —— 「人口」は一つではない
基本課題
好きな問いを立て、e-Statの「経済センサス(事業所に関する集計)」で地域の事業所規模(従業者数など)の平均値・中央値・標準偏差・四分位数を計算し、その問いに答える。
発展課題
別の地域や業種との比較を1つ加える。仕上げに、①分析にオリジナリティを出せたか、②誰の役に立ちそうか(例:商工担当者、開業を考える人)、のどちらかを1文で。
使用データは無償のオープンデータに限る。進め方(全回共通):①問いはまず自分で考える(AIに頼る前に)/②AIの出力は別の方法で検算し再現性を確かめる/③Excelは数式を残す・コードは # でメモを残す/④「作る」で終わらせず問いへの答えまで自分で出す。